日本も外国出願指向が明確に

先ごろ特許庁より今年上半期の、1.統計速報、①「出願件数」が下表のように発表された(ここでは特許出願の件数にのみふれる)。これによると6月までで158,526件、前年同期比で▲1.3%減となっており、前年より若干減少し、依然として底を打っておらず、減少傾向が続いている。このままいけば年末までこの傾向が続くと予測される。

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一方、出願全体における企業規模別の特許出願の件数はどうなっているのだろうか。公表されている特許庁「中小企業産業財産権関係データ(平成24年)」再編加工、によれば、下表の通りである。すなわち、大企業の出願件数に比べて中小企業の出願件数はきわめて少ないことがわかる。また、出願企業数では中小企業が大企業に比べて4倍以上の企業数があることがわかる。さらに、1社あたりの出願件数では大企業が98.7件、中規模企業が3.5件、小規模事業者が1.6件であり、大企業と中小企業の間に大きな差があることがわかる。このように企業数では大企業よりはるかに多い中小企業等であるが、出願件数では大企業が断トツに多いのが現実である。

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それでは国内出願は上記のような状況ではあるが、外国出願の方はどうであろうか。WIPO統計からの特許出願人の国内出願・外国出願の推移表(図1参照)によれば、日本は米国のほかドイツ、イギリス、フランスを含む欧米各国に比して国内出願の比率が高く、国内重視の出願戦略をとっているといえる。その一方で、市場のグローバル化を背景に日本では国際出願(PCT)が年平均24.6%の増加率で急増している。それを反映してか、確かに日本から外国への出願は年を追って増えており、少し古い記録ではあるが1999年には60万件近くに迫っている。このことから、日本も欧米各国のように国内重視から外国重視に出願戦略のほうに舵を切ったことがわかる。それが前記のようなPCT出願を経由した外国出願の件数増になっているのであろう。

 

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しかし、外国重視へシフトし外国への出願が増えても欧米各国も同様に増えており、出願増が決して国際競争力を高めるということにはならない。問題は出願の中身である。特に発明という人間の頭脳が産み出すものの優劣が勝負となるから、真に国際競争力を高めるために、日本の企業は是非、優れた発明内容を伴う外国出願を行って欲しいものである。