難聴に効果がある特許が成立へ

難聴は高齢者に限らず最近は若者にも増えている。その原因はヘッドホンやイヤホンを耳に装着して大きな音で長時間聴いていることにも一因しているという。このような難聴者のためいくらかでも難聴改善ができないかと考えて研究開発したのが九州福岡に本社を置く私のクライアントでもある某社です。開発後すぐ特許出願していたが、この度特許庁から特許決定の通知があったので、その概要をご紹介します。

 

この特許に係わる発明は、主にイヤホンの先端部に装着されるイヤーパッドと、それを用いて行う難聴改善耳トレーニング方法です。

イヤーパッドは、下図に示すように最先端側の遮音壁50aを他の遮音壁50b~50eより径が小さく、他の遮音壁を同径としたこと、また外耳道への装着により本体45の放音口46が外耳道内壁に接触して塞がれた状態でも音道の確保が可能なように外耳道内と本体の中空内部を連通する放音路52を最先端側の遮音壁50aにおける放音口46の周囲に形成したことをその構成とするものです。

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難聴改善耳トレーニング方法は、下図に示すように両耳又は片耳の外耳道に挿入したイヤホン5の前記イヤーパッドを、その最先端側の遮音壁50aの外周縁が外耳道内壁に接触し、他の遮音壁50b~50eの外周縁とともに後端側にたわむようにして徐々にフィットさせ、外耳道内部が密閉となるように遮音性と装着性を維持・確保して装着した状態で、イヤホン5に対し耳トレスイッチをオンして、変調しない音を一日数時間、数ヶ月間、継続して放音することにより、聴覚を活性化させて聴力の改善を図るものです。

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上記のような耳トレによれば、①幼少期からの両耳重度難聴(聴覚障害手帳2級)の35歳の女性は、トレーニングを開始して6年目には左右ともに重度難聴110dBから軽度難聴レベルの43~45dB前後まで改善し、②加齢による老人性難聴の80歳の女性は、3ヶ月位には聴力レベルが右45~左33.3dBから右30から左25dB前後まで改善し、③左耳が幼少時からの先天性感音性重度難聴の11歳の男児は、5年目には左110dBから健聴者レベルの左26.7dB前後まで改善したなど幾つかの事例が紹介されている(身体障害者福祉法では、健聴者の聴力は26dB以下と定義している)。

 

某社は、もともとは通信機器関連のベンチャー企業ですが、近年は補聴器の研究開発に技術シフト化を図っており、それが見事に成果として結実しました。これからは特許というよりこの技術をさらに活かして難聴を少しでも改善し、難聴者に喜ばれるイヤーパットやイヤホンを提供して社会に貢献して欲しいものです。