下町ロケット ガウディ計画(池井戸 潤 著)を読んで

直木賞受賞作である「下町ロケット」が第一弾としてロケットのエンジンを題材にしていたが、本書は第二弾として人工心臓に用いられる人工弁を題材にしている。
 
心臓弁膜症で苦しむ患者、特に子供達を救うためには人工心臓が必須であり、その中核となる人工弁の開発に関する話であるが、この人工弁の開発に邁進する、大田区にある従業員200人ほどの中小企業、佃製作所を中心に、人工弁を共同開発する人達の開発に賭する姿が描かれている。
 
開発にはライバルのサヤマ製作所の存在やそれを支援する日本クライン、医学会での出世競争、さらには日本の医療を取り巻く許認可の壁など、幾つかの困難が待ち受けているが、それを乗り越えて実現させるストーリーは、フィクションとはいえ、心臓疾患に苦しむ患者や医療関係者に一光を与えるものではないだろうか。
 
佃製作所のような企業の存在は、日本の多くの中小企業に元気を与えると同時に、中小企業でも技術開発力に秀でた社員を擁する会社であれば、「大企業なにするものぞ!」ということの見本を示しており、その意味では、つくづく企業は人であることを物語るものでもある。
 
日頃より中小企業の仕事に携わっている者として、佃製作所のような「小さくとも、技術開発力があり、夢のある企業」をクライアントとしてサポートしていけたらと思うところである。知財の関係者には一読するに値する本と思う。
 
近いうちにテレビドラマ化されるそうであるから、今から楽しみにしている。