流行語大賞に決まった「そだねー」の商標権化の是非

そだねー」という言葉が2018年の流行語大賞に選ばれた。この「そだねー」という言葉は平昌五輪カーリング女子の試合中の掛け声、あるいは試合途中の休憩タイム(もぐもぐタイム)での会話で使われていたが、それがマイクで拾われてマスコミにより取り上げられて有名になったものである。
 
元々は標準語「そうだねー」であるが、「そだねー」と「う」を省いた短縮形になったのはどうしてであろう。平昌五輪カーリング女子の出身地である北海道へは明治以降、全国各地、特に東北地方の人が多く移住していることから、これら東北人の方言が複雑に変質していったのではないかと言われている。それと「そうだねー」の「う」音はその前後の「そ」「だ」に比べると弱い音であることや、北海道弁が独特のトーンをつけることもあり、その結果しだいに「う」音が発音として省かれてしまったのではないだろうか。
 
それは兎も角、この「そだねー」は文字商標として商標登録になり得る言葉ではある。そのため、マスコミで取り上げられてから、それを狙った商標出願が多発しているとだいぶ前から指摘されていた。確かに特許庁の検索サイトで調べてみると、5件がヒットした。いずれも現時点では審査待ち、審査中であり、審査中のものでは商標法3条1項各号(商標登録の要件:自他識別力)の拒絶理由が発せられている状況で登録されるかどうかはわからない。出願人は地元、北海道の大学の生活協同組合、菓子会社などであるが、なかには関係不明な個人もいる。ちなみに同時期にやはりマスコミで取り上げられた「もぐもぐタイム」という言葉も5件ほど出願されており、やはり「そだねー」と同じような審査状況になっている。
 
いずれにしても自他商品・役務の識別のために使用する商標の採択に当たり、自分で考えることもなく、マスコミで取り上げられ、少しでも使える言葉であれば、それに乗じて何でも出願して自分のものにしたいというのは、如何なものであろうか。すべてとは言わないが、「そだねー」のような誰にでも知られて有名になった言葉は、たとえ先願優先だからといって特定の人に独占させるべきでなく、誰でも使用できるようにするのがよいのではないだろうか。今後の審査の進展に注目して行きたい。