アッパレ!貴景勝

今年最後の九州場所は、大方の予想が外れ、小結「貴景勝」の13勝2敗という成績での初優勝で終わった。貴景勝というと、今場所前に引退した貴乃花親方が率いていた貴乃花部屋から千賀ノ浦部屋に部屋替えしたばかりの力士である。さぞプレッシャーのかかった場所であったろうにと推測するに、本人は優勝インタビューで場所中は白星や黒星のことをあまり考えず内容のよい相撲を取ることに徹したと淡々と述べていたのが印象的であった。それにしても久しぶりの小結の地位での優勝、それも若干22歳の幕内最年少での優勝にアッパレをあげたい。
 
本場所白鵬鶴竜の二横綱の休場にはじまり、次は稀勢の里の途中休場で横綱不在となり、先行きを心配していたが、貴景勝がその穴を埋めてくれた形である。身長は175cmと力士としては小柄に属するが胸板の厚いどっしりとした体格から突き押す相撲は低く、速く、力強くて威力がある。これからもこの相撲を取り続ければ、もっと強くなるであろう。ただ、貴景勝の相撲は激しいのはよいが対戦相手の力士に対してはり手を多発することが多い。はり手は相撲手で禁止されているわけではなく、どの力士も使う手ではあるが、これから大関横綱と上をめざす力士としては品位を尊ぶ相撲道から逸脱するので今後はあまり使わないほうがよいと思う。
 
わが声援を送っている豊山は5勝10敗と今場所も負け越してしまった。どうも先場所の反省がないようだ。あるいは反省はしていても実力がそれに伴っていないのかもしれない。負けた相撲をみると、自分の体をうまくコントロールできていない。特に上体が立ちすぎてしまっている。これでは相手にそこを衝かれてしまい相撲を取らせてもらえない。今場所の成績では来場所はおそらく幕じりくらいまで番付を下げることとなりそうである。もう一度、自分の相撲を見つめ直して貴景勝のような突き押し相撲に徹してもらいたいものである。